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9月, 2013の投稿を表示しています

急性心筋梗塞、PCI後は心筋酵素のピークアウトまでケアは控えるべき?

AMIなどの場合は心筋酵素(CK,CK-MB,GOTなど)を測定して心臓のダメージを評価します。心筋酵素のピークアウトについてもCKであれば通常24時間ですが、再還流などの処置をした場合は12時間までに短縮されます。 PCI後は、稀とはいえ、再梗塞のリスクがあります。CKが低下する(ピークアウトする)ことによって、再梗塞は大丈夫そうだという判断をします。そのため、循環器内科の医師としては、ピークアウトをみるまではケアは控えてほしいと言うかもしれません。 こういった状況の中で、命がけでケアをするメリットはそれほどないかと思います。ケアを後回しにできるのであれば、ピークアウトするか評価してからでも遅くないですね。午前中にしようと思っていた清拭などの処置を午後にずらす、もしくは顔や手だけを拭くといった事は悪い事ではないかと思います。 清拭でどのくらい患者に負荷がかかるのかはケースによって異なると思いますので、やっても大丈夫な例もたくさんあるでしょう。しかし、ピークアウトまでにかかる時間はそれほど長いものではありません。その間くらいは”ルーチン”な清潔ケアは少し遠慮してもよいのでは、と思います。それで失うものはそんなにないはずです。

加圧バッグ作成時、ライン内にエアを入れない方法

A-lineなどに使う加圧バッグ、ラインをプライミングする時に細かいエアが入って困ることはないですか? あれ、作成時に一手間かけると随分エアが少なくなります。 エアがたくさん入るのは、プライミングするときの速度が速いときなんです。加圧バッグで圧を300mmHgまであげたあとにフラッシュしてプライミングすると細かいエアを巻き込みやすくなります。 そこで、1番いいのは加圧バッグの圧はかけずに、フラッシュバルブを開いてプライミングする方法です。 でも、それでは全く圧がかかってないので、プライミングに時間がかかりすぎる。そこで、加圧バッグの圧は一度、100-150mmHgくらいにあげてからプライミングし、そのあと300mmHgまであげるといい感じになります。

A-Lineの加圧バックへのヘパリン混注

A-Lineの加圧バック用の生理食塩水にはヘパリンは混注すべきか? A-Lineの加圧バック用生理食塩水にはヘパリンを混注した方がいいのですか?また私たちの施設では、1000単位=1㏄のヘパリンを混注しているのですが?少なすぎないのか、どれくらいならいいのか? 確かに、よく考えるときになることですね。あまり多くの研究がなされているわけではなさそうです。1つのRCTと、他に発表されている研究のまとめがあります。続きはJSEPTIC看護部会のHPでどうぞ http://www.jseptic.com/nursing_paper/

T-piece vs PSV

SBTをT-pieceで行った方がよいのか、PSVで行った方が良いのか? T-pieceで行った方が負荷は強いけれど、抜管(再挿管にならない)のスクリーニングとしては信頼できそう。T-pieceに耐えれたなら大丈夫!的な。でも実際はどうなんでしょうか。 誰しも持つ(持たない?)疑問ですが、1997年にそれらを比較したRCTが発表されています。続きはJSEPTIC看護部会のHPでどうぞ。 http://www.jseptic.com/nursing_paper/

ルーチンの清拭は意味があるか?

清拭にはいろいろな意味があると思います。「伝統」「爽快感」「家族の見た目」「感染予防」。感染予防の観点から言えば、2%クロルヘキシジンによる全身清拭はBSI低下に役立ったとか、そういう論文も最近はみかけます。 清拭だけでなく、なんでもそうかもしれませんが、高い価値をおく人もいるし、それほどでもないひともいる。毎日髪を洗わないと気持ち悪い人とそうでないひとの違いです。習慣や価値観からきている問題ですので、なかなかむずかしいです。患者側のニードもそれぞれですし。 個人的には、時間があれば体をきれいにし、服を着替えさせたい。でも、命をかけてまでそういうことはしなくて良いと思う。 家族に対しては?(家族がよく触る)手をきれいに洗ったり、全身清拭以外でもやれることはあると思う。私見でした。 実施基準などはエビデンスに裏付けられるものはないと思います。 Bleasdale, S. C., Trick, W. E., Gonzalez, I. M., Lyles, R. D., Hayden, M. K., & Weinstein, R. A. (2007). Effectiveness of chlorhexidine bathing to reduce catheter-associated bloodstream infections in medical intensive care unit patients. Arch Intern Med , 167 (19), 2073–2079. doi:10.1001/archinte.167.19.2073

Tube Compensationとは何?

Tube Compensation (TC)とは、気管チューブの抵抗のみを打ち消すモードです。 気管チューブは細くて長いので抵抗を生み出します。 抵抗を生み出すということは、気管チューブの遠位と近位ではかかっている圧が異なるということです。口元の気道内圧(回路内圧)では10cmH2Oの圧がかかっていても、気管チューブ近位(気管支部)では抵抗により圧が打ち消されて5cmH2Oくらいにしかなっていない可能性もあります。 TCでは、入力された気管チューブのID(内径)と長さ(気管チューブか気管切開かで選択)から、抵抗を予測し、気管支部で一定の圧を生み出すようにフローを制御します。 簡単に言うと、PSVではあくまでも口元の圧のみをモニタリングして補助をしているのに対し、TCでは抵抗を予測しつつ気管チューブの抵抗を打ち消すだけのフローの制御をしています。 TCはSBTに良く使用されるモードです。他の方法と比較し、有用であるという報告も多数存在します。 Reference Unoki, T., Serita, A., & Grap, M. J. (2008). Automatic tube compensation during weaning from mechanical ventilation: evidence and clinical implications. Critical care nurse , 28 (4), 34–42– quiz 43.

Transpulmonary Pressure (経肺圧)てなに?

Transpulmonary Pressure とは、肺胞内外圧較差のことです。 式で表すと、 Tpt = Palv - Tpl   Tpt: Transpulmonary Pressure 、Palv: 肺胞内圧、Tpl: 胸腔内圧 です。肺胞内の圧から胸腔内圧を引いたものです。 例えば肺胞内圧=20cmH2Oのとき、自発呼吸も発生し、胸腔内圧が-7cmH2Oであれば、 20cmH2O-(-7cmH2O)=27cmH2O がTranspulmonary Pressure になります。これにより、肺胞壁にかかる圧が分かるわけです。大きければ大きいほど肺胞は膨張する方に働くことになります。 最近では肺胞内圧よりもTranspulmonary Pressure が高いことがVILIと関連している、なんて言われてたりもします。

カフ上部吸引機能付き気管チューブ:吸引できる?

経験的に、うまく吸引できないということが多いですよね。吸引の方法の、専用の機械を使って間欠的に吸引する方法やシリンジを使用する方法もありますが、おもったより引けないなーというのが感想です。 2007年の研究では、 48% で有効な吸引ができなかったとされ、この原因は、粘膜が吸引孔にくっついてしまうことが挙げられています。ということはあまり高い吸引圧をかけると粘膜を損傷させる可能性があるということですね。 カフ上部吸引からうまく引けないのは普通。引けなくても吸引圧を過剰にあげないことが大切ですね。 Reference Dragoumanis, C., Vretzakis, G., Papaioannou, V., Didilis, V., Vogiatzaki, T., & Pneumatikos, I. (2007). Investigating the failure to aspirate subglottic secretions with the Evac endotracheal tube. Anesth Analg , 105 (4), 1083–5, table of contents.

ICDSCは鎮静下の患者でも使えますか?

ICDSCは最初の論文でICUの患者全般でその信頼性(評価者間で一致するか)、妥当性(精神科医の診断と一致するか)が検討されているので、理論上は鎮静下の患者でも使えることになります(判定できない昏睡状態の患者を除く)。ICDSCが発表された最初の論文では、ICDSCに高い信頼性、妥当性が確認されていますが、人工呼吸患者のみを対象にするとその信頼性、妥当性は変化するかもしれません。 ちなみに、もともとICDSCが発表された論文ではその使用法の詳しい説明は省かれており、「こういうときにはどうすんの?」的な質問に対して正確な答えはありません。 Reference Bergeron, N., Dubois, M., Dumont, M., Dial, S., & Skrobik, Y. (2001). Intensive Care Delirium Screening Checklist: evaluation of a new screening tool. Intensive Care Medicine , 27 (5), 859–864.

CaO2、DO2とは?

動脈血酸素含量( CaO2 )は 1L あたりに含まれる酸素の「量」を示します。実は、我々がみている動脈血酸素分圧( PaO2 )は動脈血に溶存している酸素を見ているにすぎません。 血液中で酸素のほとんどはヘモグロビンと結合しているため、血液中の酸素の「量」を知りたい場合、ヘモグロビンを考慮に入れる必要があります。 CaO2 は以下の式で表すことができます。 CaO 2 =(1.34 × Hb × SaO 2 )+ (0.003 × PaO 2 ) この式で分かるとおり、血中に含まれる酸素の量は PaO2 よりもむしろヘモグロビンと酸素飽和度( SaO2 )に依存します。酸素飽和度はパルスオキシメーターで簡単に知ることができるのですが、意外と重要なことが分かりますよね。また、いくら PaO2 が高値を示していても、ヘモグロビンが低ければ効果的でないことが分かります。 CaO2は動脈血中に含まれる酸素の量ですが、これは含まれているだけであって、実際に組織へ運ばれているわけではありません。実際の組織へ運ばれる酸素の量(酸素運搬量: DO2 )は、動脈血酸素含量に心拍出量を掛けたものとなります。 つまり、  DO 2 =CO × CaO 2 となります。DO2は「デリバリーオーツー」と臨床では呼ばれることがありますので、覚えておくとお得です。 組織への酸素供給を考えるときには、酸素飽和度とヘモグロビン、それに心拍出量(CO)ですね。

せん妄のリスクとなる薬剤

せん妄のリスクとなるとされる薬は多種多様で、ICUで使う薬のほとんどじゃないか、と思うほどであるが、非常に重要なのはベンゾジアゼピン系の鎮静薬である。 人工呼吸患者を対象とし、ミダゾラムとデクスメデトミジンによる鎮静管理を比較した無作為比較試験では、ミダゾラムで鎮静管理を受けた患者の方が有意にせん妄の発生率が高かった 。 Riker RR, Shehabi Y, Bokesch PM, et al. Dexmedetomidine vs midazolam for sedation of critically ill patients: a randomized trial. JAMA 2009;301:489-99. 同様に、デクスメデトミジンとロラゼパム(静注薬は日本未承認。)の比較でも、ベンゾジアゼピン系の鎮静薬であるロラゼパムで有意にせん妄が多いという結果が報告されている 。 Pandharipande PP, Pun BT, Herr DL, et al. Effect of sedation with dexmedetomidine vs lorazepam on acute brain dysfunction in mechanically ventilated patients: the MENDS randomized controlled trial. JAMA 2007;298:2644-53. せん妄かな、と疑ったら、これらの薬が投与されていないかを確認してみるとよいと思う。他の薬に変えれるのであれば、変更をお願いするとよいかも。 ちなみに(よく見かけると思いますが)、経口の催眠薬もせん妄を引き起こしたりするので、眠れないと行っているからといって安易に投与するのもよくない。眠らせるつもりがせん妄を引き起こしたというのは稀ではない。

せん妄と不穏はどう違うか?

不穏の定義は、それほどしっかりしたものはありませんが、一般的に暴力的であったり落ち着きがない状況を示しています。一方、せん妄は、いくつかの症状が集まった状態のことをいい、その中には「注意力の低下」「症状の変動」「意識の変容」などが含まれています。 不穏はせん妄という判断をするときに必要な条件に入っていません。ちなみに、幻覚や妄想もせん妄という判断する必要条件には入っていません。 つまり、 1)不穏はかならずしもせん妄ではない。 2)不穏患者の中にはせん妄患者もいる。(過活動型せん妄) 3)不穏症状がないせん妄患者もいる。(低活動型せん妄) ということになります。 暴れていても「せん妄」とは限らないので、注意力が低下していないか、等を評価する必要があるわけです。 ちなみに、せん妄のスクリーニングツール CAM-ICUに関してはこちらに詳しく書いてあります。 bilt.edu/icudelirium/docs/CAM_ICU_training_Japanese.pdf

SBT失敗後の換気モードは何がよいのでしょうか?

SBTに失敗すると、呼吸筋は疲労し、筋線維はダメージを受けるとされています。健常人のデータですが、呼吸筋に負荷をかけ、その結果低下した横隔膜の筋力が回復するには24時間以上かかるとされています。なので、十分に呼吸筋が休めるよう、A/Cなどのモードにするとよいと考えられています。 Reference Laghi, F., D'Alfonso, N.,et al. (1995). Pattern of recovery from diaphragmatic fatigue over 24 hours. J Appl Physiol, 79 (2), 539–546.

Q & Aブログ始めました。

JSEPTIC看護部会では、素朴な疑問から素朴でない疑問に答えるべく、Q & A用のブログを作成しました。Q & A以外にも適した話題があればここで共有しようと思います。 今後ともよろしくお願いします。 なお、ここでのAnswerはあくまでも個人の意見であり、参考として扱って頂き、臨床で応用する場合には自己判断でお願いします。