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1月, 2014の投稿を表示しています

医師、患者が疑問に思う必要のある5つ事項

最近、話題の 「Five Things Physicians and Patients Should Question」を翻訳してみました。意訳している箇所もあります。 よかったら参考に一度読んでみてください。 本文は http://www.choosingwisely.org/doctor-patient-lists/critical-care-societies-collaborative-critical-care/ 医師、患者が疑問に思う必要のある 5つ事項   1.              ルーチンで毎日検査を行うのではなく、特定の疑問を明らかにするために検査を行う。 多くの検査(胸部X線、動脈血ガス、採血、心電図を含む)は、定期的(例えば毎日)にオーダーされる。ルーチンな検査は、特定の疑問に対して必要時検査を行う方法や、治療方針を決定するために必要な検査を行う場合のみ検査を行う方法と比較して、医療費を増加させ、患者に利益がなく、もしかしたら患者に害を与えるかもしれない。不要な採血は、輸血を必要とする貧血の原因になるかもしれないことや、 ルーチンの検査で生じる意味のない検査値に対して精密検査を行うリスクも含まれている。 2.              血行動態が安定し、出血がなければ、 ヘモグロビン濃度が 7g/dL を越える ICU 患者に 赤血球輸血をしない。   ICU において 赤血球輸血は、循環不全を引き起こす急性出血よりも良性貧血に対して行われている事が多い。すべての ICU 患者を対象にした 研究によって、ヘモグロビン濃度 7mg/dL を基準に 赤血球輸血を行うことは、それ以上のヘモグロビン値を基準に赤血球輸血をした場合と比較して生存率は変わらないか改善、合併症の低下、コストの削減と関連していた。積極的に輸血することは資源の少ない輸血の入手を困難にするかもしれない。 ACS 患者では輸血投与の基準値が異なる可能性があるが、大部分の観察研究ではこのような患者に対する積極的な輸血の有害性が示されている。 3.              ICU 入室後最初の 7 日間以内には、十分な栄養状態の重症患者には静脈

看護研究??

多くの病院で「看護研究」はある年代にとって必須らしい。例えば3年目は看護研究をやらないといけないとか。うちの病棟から一個は出さないといけないとか、うちの主幹で学会やるから出せとか。 これ、なん何だろうってよく思います。多くの場合、その強制的な看護研究は学会発表されず、院内の発表会で終わりなんですよね。学会発表までいくにしても、県内の看護協会主催の学会とかね(専門学会よりもそういうのが病院には喜ばれるのがちょっと微妙)。 もちろん、論理的な思考能力とか、自分の経験を客観的にまとめることにこういう課題が役に立つのは否定しません。でも、どっかのラインでそういう教育的なことではなく、看護部の意向とか何か政治的な方向に流れていくような。うちの病棟(あるいは病棟)から一つもないのは恥ずかしいとかね(そういう事を言うのであれば、そういうことを言う人が計画的に研究のデザインを練り上げ、実施すべし。そして若い看護師に手伝ってもらって連れて行けば良い。)。 その結果振り回されるのはスタッフ。勤務も厳しい中でそういうDutyも課せられ。。かつ、指導者も研究の経験もないから言っていることが二転三転する。気に入る結果が出ないとやり直しを命じられる。その結果、二度と研究なんかやりたくないと思う。 学会ってそういうものじゃないと思う。特に若いスタッフにとっては、自分の施設以外でどのような実践をやっているのか?どんなことを考えているのか?どのようなことがスタンダードだと言われているのか?などを知るとてもいいチャンス。そういうチャンスを活かせるようにしたいものです。 蛇足ですが、「看護研究」っていうのも実はちょっと異和感。医学研究とか、薬学研究とか、いちいち言わないんだから、ただの研究でいいのでは?(多職種から突っ込まれたときに「看護研究」であることがうまい防護壁になるのかな)

社会的な理由による抜管延期

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頑張って、鎮静剤を1日1回中断しているのですが、人工呼吸期間が短くなっている印象を持てません。特に土日には抜管できそうでもしない・・・そんなことも多いのですがほかの施設でもそうなのですか?という質問を受けましたので、その答えになるかわかりませんが一つ。 Daily interruption of sedatives 1日1回の鎮静剤の中断は、人工呼吸日数を減らす Kress, J. P., Pohlman, A. S., O'Connor, M. F., & Hall, J. B. (2000). Daily interruption of sedative infusions in critically ill patients undergoing mechanical ventilation. New England Journal of Medicine, 342(20), 1471-1477. 深い鎮静と比べれば、適切に呼吸状態は評価できるし、鎮静剤から覚める待ち時間も減るし、確かに人工呼吸期間は短くなるでしょう。 そして、そのために我々看護師は、浅い鎮静または鎮静から覚めた患者が日常生活を安楽に過ごせるよう毎日頑張っている。 でも、私たちの施設でも質問者の方の施設と同じような現象が起こっています。 私たちの施設はSemi-closed ICUという名のOpen ICUで医師は常駐していませんし、土日祝日には、各診療科のレジデントの先生方が回診に・・・。 そういうわけで連休が続くと、極端に人工呼吸期間が長くなっています。 この問題を解決するのは、難しい。時間もかかる・・・ ですので私はわりきって、人工呼吸期間とは別に鎮静をきることのメリットがあるはずと考えるようにしています(もちろん解決のための努力は続けますが…) 例えば 鎮静剤をICUを出た後のPTSDの問題のことも考えると、鎮静は出来るだけ浅く・・・・ リハビリや早期離床、ADLの獲得の利益・・・ なにより「ICUで治療を受ける対象」から「生活をおくる人」へと、大きな変化をおこすことが出来る きっとそのことから受ける恩恵は患者ー医療者ともに大きいはずと信じています

鼠径部へのカテーテル留置患者の離床

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鼠径部のカテーテル(中心静脈ライン、動脈ライン、血液浄化用のバスキュラーカテーテル)の留置患者の離床に関して、です。 確かに、鼠径部にカテーテルが挿入されている患者の離床は手控えてしまいますね。屈曲や事故抜去、血腫形成などが怖いです。実際に離床が進まない理由として鼠径部へのカテーテルが最も多い理由であるという報告もあるくらい。 では、それらの憂慮は本当にあたっているでしょうか。 以下のような報告があります。 Perme, C., Nalty, T., Winkelman, C., Kenji Nawa, R., & Masud, F. (2013). Safety and Efficacy of Mobility Interventions in Patients with Femoral Catheters in the ICU: A Prospective Observational Study. Cardiopulmonary Physical Therapy Journal , 24 (2), 12–17. 心血管系ICUに入室し、鼠径部へカテーテル(Femoral Catheter)が挿入されている77人の患者を対象にした観察研究を報告します。端座位、立位、椅子への移乗、歩行を含むリハビリテーションを行い、その結果を報告しています。挿入されていたカテーテルは動脈ライン(長さ12 cm)が最も多く、次に中心静脈(16〜20 cm)、血液浄化用(23cm)の順になっています。合計で630回の離床を行っており、カテーテルに関連した合併症は一つもなかったことを報告しています。 その他、本文は読めていませんが、他の研究でも同じような結果が出ているようですね。 Damluji, A., Zanni, J. M., Mantheiy, E., Colantuoni, E., Kho, M. E., & Needham, D. M. (2013). Safety and feasibility of femoral catheters during physical rehabilitation in the intensive care unit. J Crit Care , 28 (4), 535.e9–15

ScvO2モニタリングは持続的?間欠的?どっちがいいの?

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敗血症に対する ScvO2 のモニタリングについて以前アンケートをとりましたが、持続的 vs 間欠的どちらがいいの?という議論が ML でもされました。今回、 Emerg Med J でパイロットスタディが行われました。 Huh JW, Oh BJ, Lim CM, Hong SB, Koh Y.(2013). Comparison of clinical outcomes between intermittent and continuous monitoring of central venous oxygen saturation (ScvO2) in patients with severe sepsis and septic shock: a pilot study. Emergency Medicine Journal, Nov;30(11):906-9 教育病院での単施設試験。 重症敗血症・敗血症性ショックの 106 名の患者さんに対して、 ScvO2 を持続的モニタリング (n=53) と間欠的モニタリング (n=53) に振り分けて EGDT が達成できているか調べたもの。 結果は EGDT 達成率に有意差なし。死亡率、 ICU 滞在日数も有意差がなかったみたいです。 まだパイロットスタディであり、教育病院での試験なのでこの結果を踏まえて「よしっ! ScvO2 持続モニタリングはいらないぞっ!」というものではありません。持続のメリットとしては、①治療の評価、②ケアの評価があると思います。①について考えると、大量輸液、カテコラミン投与開始しても ScvO2 が改善できない患者さんもたまにいます。そういった時は早期に他の対応が必要ですし、早期に気づける持続はよかったと思える経験もあります。②でも、体位変換、ベッドアップなどのケアはいつやるの!「今でしょっ!」「 ScvO2 下がったからやっぱやめた。」と評価できたりします。 逆に、「うちには予算が、、。持続では変えないわ。」という施設も、 EGDT 治療開始時や随時、 CV ルートから血ガス (ScvO2) を測り間欠的に評価する事ができます。「 ScvO2 の持続モニタリングがなくても敗血症の治療はできます。」と言う先生もおられ、心強く

人工呼吸患者の早期離床

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以前、離床に関してはJSEPTICでもアンケートをとったのだが、 ドイツにおける人工呼吸患者の早期離床の実態が、Crtical Care Medicine誌から発表されている。筆頭著者は看護師。 Nydahl, P., Ruhl, A. P., Bartoszek, G., Dubb, R., Filipovic, S., Flohr, H.-J., et al. (2013). Early Mobilization of Mechanically Ventilated Patients. Critical Care Medicine , 1. 2011年の調査で、指定した1日の人工呼吸器を使用している離床状況をWeb-based アンケートで報告してもらい、116施設からの報告を受けた。 気管挿管中に限れば、92%がベッド上(ベッド上での座位も含む)、6%が端座位、2%が立位。これが気管切開になれば端座位が39%に増えた。離床できない理由は「循環動態不安定」「鎮静が深い」が多数であった。 気管挿管中の端座位がかなり少ないことが分かる。他の研究ではもっと進んでいるような印象を受けるが、この研究では人工呼吸患者すべてを対象にしている(離床の研究では、72時間以上人工呼吸を行っている患者やもともとのADLが低い患者、CPAとか、いろいろな除外基準を使用して患者を絞っているのが普通だと思う。この研究は絞れていないので離床している率としては低く見積もられてしまう)。 この研究で面白かったのは、結果よりも方法。指定した1日の状況をサーベイするもの。手続き的に簡単にできれば、実態を調査するのに適した方法。難関は??各看護部?知っている偉い人教えて欲しい。