せん妄は一枚岩ではない

人工呼吸、鎮静管理を受け、DIS protocolを行う患者に対し、DIS (Daily Interruption of Sedatives)前後でRASS、CAM-ICUを比較した論文より。

102人の患者から251回のDIS前後のCAM-ICUデータを得た。
うち、5回は昏睡状態でCAM-ICUでの評価ができないので除いた。つまり、246回の評価で分析を行った。
DIS前の評価では、246回中218回でCAM-ICUは陽性であった。
しかし、そのうち63名はDIS後の評価ではCAM-ICUは陰性になった。→ここで陰性になった患者は、鎮静薬によるせん妄と考えられる(Rapidly-Reversible, Sedation-Related Delirium)。

両方ともせん妄であった患者は、鎮静薬の影響はないとはいえないけれど(もっと時間をかければ変化があったかもしれない)、とりあえず"Persistent Delirium"(継続するせん妄)とした。

あとは、DIS前後でCAM-ICU陰性の患者がいるので、そういう患者はNo Delirium。

一人の患者で両者が混合する場合を"Mixed"と名付ける。

患者ベースで考えれば、102人の患者のうち、

No Delirium (ND): 10人
Rapidly -Reversible, Sedation-Related Delirium (RRD): 12人
Persistent Delirium (PD): 51人
Mixed: 24人

に分けることができる。
とりあえず、RRDの12人は鎮静薬によるせん妄と考えてよさそう。ちなみにそれぞれのグループにおける鎮静薬の種類には有意な差はない。

で、せん妄患者の予後。いままではせん妄は予後悪化と関連していると言われてきた。この研究で面白いのはここ。

1年後死亡率をみると、
No Delirium (ND): 20%
Rapidly -Reversible, Sedation-Related Delirium (RRD): 25%
Persistent Delirium (PD): 66%
Mixed: 54%

であった。

並べると、死亡率が高い方から
PD>Mixed>>>RRD>ND
です。

RRDはむしろNDに近い。つまり、予後と関連する、というのはせん妄全体での話ではなくって、良性の、一過性の鎮静によるせん妄は予後とあまり関連してない。むしろここで言うPersistent Deliriumが予後と関連していると思われる。
Persistent Deliriumにはどのようなものがリスクとして含まれるか、というでみてみるとRRDと比較して高齢であったりSepsisが多く含まれている。

せん妄とひとくくりにせずに、鎮静によるせん妄なのか?そうでないのか?を評価するこ重要なのでしょうね。DISはそのためにも重要。


Patel, S. B., Poston, J. T., Pohlman, A., Hall, J. B., & Kress, J. P. (2014). Rapidly Reversible, Sedation-related Delirium versus Persistent Delirium in the Intensive Care Unit. Am J Respir Crit Care Med, 189(6), 658–665. doi:10.1164/rccm.201310-1815OC

コメント

このブログの人気の投稿

カフ圧計がないのですが・・・・

CAM-ICUとICDSCどちらが良い?

急性心筋梗塞、PCI後は心筋酵素のピークアウトまでケアは控えるべき?