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看護師の質/量と患者の予後

ICU看護師の質、量が患者の予後に影響するか?というもの。 著者は看護管理で有名なU PENNのDr Aiken。
Critical Care MedicineのAhead of Printから(まだ誌面になっていない論文)です。
Kelly, D. M., Kutney-Lee, A., McHugh, M. D.et al. (2013). Impact of Critical Care Nursing on 30-Day Mortality of Mechanically Ventilated Older Adults. Critical Care Medicine, 1. 
「クリティカルケア看護が高齢人工呼吸患者の一年後の予後に与える影響」です。 対象患者のデータベースは様々なものを使用していますが、2006-2008年、4つの州、303施設からのデータを使用しています。それと、各施設の看護師の質/量を答えてもらって、それらが患者予後と関連しているかをみています。
重要な看護師側の因子としては、学歴(学士以上かどうか)、経験年数(ICUかどうかは問わない)、スタッフィング(何人の患者を受け持ったか)、職場環境(Work Environment)です。職場環境に関しては、PES-NWIというスケールを使用しています。このスケールのサブスケールには、人的資源、病院の意思決定に看護師が参画できているか?、看護の基盤(教育など)、看護管理者のリーダーシップ、看護師と医師との協働が含まれます(この研究では人的な資源はスタッフィングと強く相関するので除外)。
結果、スタッフィングと経験年数は患者の予後と関連がなかった。 職場環境と学歴は患者予後と関連があった。 (Intensivistがいるかどうかは変数にいれてある)

結果として、職場環境を良くすることが大事。また、学士以上の看護師を増やすことが大事、となるんだけど。 職場環境は同意。でも、怖い先輩がいないかとか、同僚は仲がいいか、も入れて欲しいなあ。学士に関しては、本当にそうだろうか。。
そりゃある程度はそうかもしれない。けれど、みてて学士、短大卒、専門学校卒でそれほどケアが違うとも思わない。もし少しあったとしてもだ、患者の死亡率を変えるほど違うか?って思う(アメリカではBSNの教育しかみていないので、日本のそ…

レベルの高いICU part 2

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年末ですねー。 以前、反響が会ったので、Part 2。今回はレベルというか良いICUのはなし。
あなたは新しいICUの管理者です。以下の特徴を10選べたとします。
すべてのスタッフがACLSを理解し実践できる。 すべてのスタッフは不必要な抑制はできるだけしない。 すべてのスタッフはTNF-αの機能を理解できている。 すべてのスタッフはSIMVとSpontの違いを理解できている。 すべてのスタッフはpermissive hepercapneaを理解している。 すべてのスタッフAaDO2を理解できている。 すべてのスタッフは患者を離床させようと努力する。 すべてのスタッフはインシデントが起きたときに個人の能力に原因を求めない。 すべてのスタッフはAPRVに精通している。 すべてのスタッフは患者に触れたあとにグローブを脱ぎ、手指消毒する。 すべてのスタッフはDICスコアを計算できる。 すべてのスタッフは心音のS3とS4を区別し、記録する。 すべてのスタッフは患者の訴えを真摯に受け止める。 すべてのスタッフはVVIとAAIの違いが分かる。 すべてのスタッフは他のスタッフに対し、仲良くやっていこうと心がけている。 すべてのスタッフは薬剤投与時に患者に装着されたネームバンドを確認する。 すべてのスタッフは緊急入室に対しても快く引き受ける。 すべてのスタッフは新人の失敗を休憩室で笑いのネタにしない。
あなたが考える良いICUでは何を選びますか? 私たちに必要な最低限の知識やスキルは何でしょう? ここでは10個の特徴を得られる前提ですが、実際にそれらを得ようとした場合、どのくらいの苦労が予測されるでしょうか?(例えばAPRVを教えることに比べて) 私たちにまず必要なことは何でしょうかねー。 AACNのHealthy Work Environment が何かのヒントになるかも。 http://www.aacn.org/WD/HWE/Docs/HWEStandards.pdf


スタッフが行う問題解決ーポジティブデビアンス

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論文散策していたらある論文をみつけた。「あること」を行うと手指衛生の実施率が46.5から62.0%に上昇したという研究がある。これは手指衛生の話だけでなく、いろいろなエビデンスを実際の実践に活かす上で参考になるかも。特に多くのスタッフで成り立つICUでは研究結果はそのまま実践に繋がらない。それをいかに普及させるかが常に課題となる。


MD, A. R. M., MD, D. T. N., MD, A. J. W. C., MD, T. Z. S. C., MD, R. P. B., MD, M. S. D. J., et al. (2013). A multicenter study using positive deviance for improving hand hygiene compliance. American Journal of Infection Control, 41(11), 984–988. 
「あること」とは、
Positive Deviance (ポジティブデビアンス)という手法である。このセッションを取り入れることによって手指衛生の遵守率を挙げたらしい。
ポジティブデビアンスってなんじゃ?と私も思ったので、検索で引っかかったHarvard Buisiness Review (HBR)を早速取り寄せてみた。


http://www.amazon.co.jp/Harvard-Business-Review-ハーバード・ビジネス・レビュー-2005年/dp/toc/B000AMI0BE


するとこういうことらしいと(推測)。
スタッフの行動を変異させるのはとても難しい話で、それらに関しては様々なフレームワークが紹介されている。このポジティブデビアンスそのひとつ。ポジティブデビアンスは「良い逸脱」という意味。手指衛生を「常に」行うのは難しいとしても、自部署のなかに他とは違ったよい方法で手指衛生を常にしているひとがいるかもしれない。そのひとのやり方をみんなが学習するのがポジティブデビアンスだそう。

似ている方法には「ベストプラクティス」がある。しかし、「ベストプラクティス」とは、よく勘違いされるのだが、「最高の実践」という意味のみでなく、このプラクティスを分析し、管理職(あるいは認定看護師や専門看護師)が自施設にひろめるというスタッフのパフォーマンス向…

適切な胃残量の基準は?

胃残量はいくつくらいになったら速度を変えたり速度を上げたりしていますかという疑問です。
 一般的には150mlから200mlくらいかと思うのですが、どうなのでしょうか。
誤嚥と胃残量の関係性には相反する結果が出ています。胃残量が多いことは誤嚥や肺炎に関連するという結果もあるし、そうでないという結果もあります。最近の研究では関連がないとしているのが多い印象があります。

下記の文献では、 胃残量のリミットを200mlとした場合と、500mlとした場合で、栄養の投与量や合併症に差があるかを検討しています。

J. C. Montejo, E. Miñambres, L. Bordejé, A. et al. To compare the effects of increasing the limit for gastric residual volume (GRV) in the adequacy of enteral nutrition. Frequency of gastrointestinal complications and outcome variables were secondary goals.  36 (8) 1386-1393 Pages 1386 - 1393 2010

研究のデザインは多施設RCTで、n(対象者数)=329です。対象は挿管、人工呼吸患者です。
経腸栄養はプロトコール化されており、両者の違いは 胃残量のリミットの違いです。

結果として、胃残量500mlの群は、
嘔吐、腹部膨満、下痢などの消化器合併症を増加させなかった。ただし、 胃残量増加という合併症は有意に低下した(リミットを変えているので当然)。

両群間で肺炎発生率、人工呼吸期間、ICU在室日数に差はなかった。

実際に投与されたカロリー/処方されたカロリー×100で表されるDiet Volume Ratio (Diet VR)は、
7日後、12日後では胃残量500mlの群で有意に高く、3週間後、4週間後では胃残量200mlの群で高かったが、有意な差はない(この理由はなぞ。ただ、データだけみると時間が経過するとともに個々のばらつきが多くなっている可能性あり)。


 この結果からみると、 7日後、12日後のDiet VRは500mlの群で有意に高いとは言っているけれども、それ…

エアマットのモードと循環・呼吸変動

Intensive Care Medicine誌のLetterからです。


Bein, T., Strassburger, K., Graf, B. M., & Göcze, I. (2013). Surprising physiologic side effects of an alternating pressure air mattress during prone position in an ARDS patient. Intensive Care Medicine


まだきちんと紙上では出版されていないので、「ページ」はついていません。
エアマットレスの圧切替モードで腹臥位のARDS患者の循環、酸素化が変化した、という報告です。

患者は80歳男性(78kg)、交通外傷で肺挫傷、胸骨骨折、肋骨骨折、その他四肢にもろもろの骨折です。P/Fは82、重症ARDSということで挿管管理のうえ、腹臥位を実施しました。循環も不安定でノルアドレナリンを0.3μg/kg/minで投与しています。
で、圧切替型のマットレスを使用していたのですが、そこで、圧切替(10分)と同調するような収縮期血圧、心拍数、酸素飽和度の変化がみられたということです。確かに論文に示されているバイタルサインをみると周期的に変化しています。

この周期的な変化は圧切替から静止に変えると止まり、また、仰臥位では周期的な変化は起こらなかったとのことです。著者は圧の切り替えが胸腔内圧や腹腔内圧に影響を与え、循環、呼吸に影響を与えた可能性がある、と述べています。

個人的には、骨折の部位が部位だし、痛みへの影響はどうなんだろうかとも思ったりしますが、エアマットレスの動作ひとつでバイタルサインに影響を与える可能性があるんだなあと思ったLetterでした。もしかしたらいままで見逃していたかも。
周期的な変化をみたら、マットレスの圧切替もちょっと考えてみよう、ですかね。




新人教育のやり方

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新人教育でしばしば議論になるのは、業務(タスク)優先か、アセスメント能力育成が優先か?です。
わりと熱心な先輩はアセスメント優先で、細かい業務(洗い物とか、片付けとか)は適当でいいよーといったりしますが、業務優先の先輩にあたったりしたら、目先は変わって、時間通りに、きちんと仕上げることを優先されたりします。よね?
新人教育ではどちらが重要なのでしょうか。

個人的には、新人は自分の居場所(立ち位置)を見つけることが大変です。それが見つからなくって辞めちゃうほどです。
なので、まずICUの一員として認められなければならない。あー今日は新人が2人もいる、教えなきゃいけないから大変だーという環境を作ってはいけない。自分たちが厄介者みたいでしょ?そういうのすごい落ち込むから。
新人にはまず自分が役に立ってるという感覚を植えこまねば。と。

で、結局、業務を先に覚えさせ、さっさと夜勤にいれ(+1でね)、新人さんがいると手伝ってくれて楽だわ。くらいにするのがよいかと。

ちなみに夜勤は5月から。7月には日勤独り立ち。特に準夜勤はオペが帰ってきてバタバタするので、+1の期間は長い。しかし、その間に(秋頃)心臓血管外科の手術もうける。新人には難しいでしょーとよく言われるが、見たことないものを勉強はできない。できるだけ経験を積ませながら勉強する方がよいかと。しかも、心臓血管外科は医師が結構ベッドサイドにいる。それほど危なくはない。
むしろ、病棟から転入した内科患者のほうが見てるナースで患者の持っていきかたに差がでるんじゃないかな。

長期的スパンでみればうまくいくか分からないですけどね。


ICUナースの仕事(内野先生のブログより)

JSEPTICの内野先生のブログより。
応援していただいてうれしいですね。

http://blog.goo.ne.jp/druchino/d/20131215

Open ICU-面会に関する考察

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Open ICUはいわゆる診療科の話ではなくって、面会24時間かどうかってこと。
いろいろな論文で24時間面会はいい!って結果がでたりするんだけど、個々の事例で考えた場合、すべての患者、家族に言い訳ではないかも、と思ったり。よくあるのは付き添わなければならない!って家族が思って負担になっている場合。(本人たちは付き添うという役割を持つので負担ではないというかもしれないが。)理想的にはケアにも一緒に参加して、情報もすべて共有して、なのでしょうが。
最近の論文では、面会時間を伸ばしたら看護師のBurn Out率があがったらしい。
The ODIN Study Group, Giannini, A., Miccinesi, G., Prandi, E., Buzzoni, C., & Borreani, C. (2013). Partial liberalization of visiting policies and ICU staff: a before-and-after study. Intensive Care Medicine39(12), 2180–2187. 
確かに、仕事が終わるのが22時でそれだったら面会にこれないよーという方には、硬いこと言わないで面会してほしい。でもね、付き添いOKとは違う。 考慮しなければならないのは、いつでも面会できるメリット、その結果、うまく誘導しないと24時間付き添ってしまうときの家族の疲れと看護師の疲れ。看護師に疲れるな、それが仕事だよ!というのは簡単だし、理にかなっている。
けど、どうだろう。。。
本当に難しい。最終的には個別に対応が一番いいんだけど、公平性が保てなかったりする。もちろん、こちらは公平なのだけれども、その公平が家族に理解できるかは分からない。(他の例をだすと、重症だから時間を割くのは医療者からしたら公平なのだけれども、家族にしたら非重症者に同じだけ時間を割かないのは非公平だったりする)
誰か面会の実態に関するアンケートしないかな。


カフ圧計がないのですが・・・・

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気管壁に掛かる圧力 = {カフ内圧 - (カフ張力によって生じる打ち向きの力)}/カフの接地面積

カフ圧計の値が高くなればそれだけ気管壁の虚血などの合併症のリスクが上がるといえます。

一番いいのは、挿管時にカフ圧計を使用して、カフ圧を測定することです。 もちろん、そんなことは知っていて、でもカフ圧計が無い、または買ってもらえない施設ではどうしたらいいのか?という質問が来ましたので、現時点での解決策を考えてみました(完全な解決策は見つからなかったですが・・・)

多くの施設でカフ圧計がなかったころには以下のような方法がとられていました。
・とりあえずシリンジで10cc
・耳たぶの堅さ程度に
・リークが無くなるぎりぎりの量 これらの方法を再検討してみました。


まず、耳たぶ

過去、私たちのチームでは、耳たぶの硬さとカフ圧を比較する検討を、多職種(医師、看護師、救命士)で行いました。その結果、耳たぶの硬さは、適切なカフ圧範囲からかなりの割合で逸脱していることがわかりました(学会発表のみデータ未公開)。そりゃそうです。一人一人の耳たぶの硬さは違うし、同じと思う感覚のずれ自体も大きいのですから(ちなみに私の耳は昔ボディーピアスでおっきな穴が開いていて周辺は硬いです)

次に、リークがなくなるぎりぎりの量とシリンジで適当に入れる方法

下記の論文では、日本人240人を対象にマリンクロット大容量低圧挿管チューブ(Hi-Lo)を使用し、20cmH2Oの気道内圧でエアリークがなくなるまでカフを膨らませています。その結果、20-30cmH2Oの適正圧範囲であったものは28%、20cmH2O以下55%、30cmH2O以上17%でした。この研究では、身長と年齢からカフに何cc入れれば適正圧になるかを統計学的に検討していて、その結果、

シリンジでカフに入れる量=0.11×身長+0.042×年齢-15.6

という式が導き出されました。

例えば20歳で身長150cmならば、0.11×160+0.042×40-15.6=3.68mlをカフに入れなさいという結果でした。やや少ない感じはしますが、この式に従えば、65%が適正圧に、30cmH2O以上8%、20cmH2O以下27%にと、適正範囲内に収まりやすいという結果でした。 この式では10ccの空気を必要とする症例は少ないことになります。もちろ…

VAPにブラッシングは効果があるのか?

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VAP予防に対するブラッシングの有用性に関する検討が「看護に役立つ文献紹介」にUPされました。チェックしてみてくださいね。

http://www.jseptic.com/nursing_paper/index.html



患者のニードに合わせたケアの提供?

質問がしばらくないので、少し雑談?

”集中治療の焦点はケア提供者やICUのニードの合わせて患者を調節するのではなく、患者のニードに合わせて治療やケアを調節すべきである。”

Strøm, T., & Toft, P. (2011). Time to wake up the patients in the ICU: a crazy idea or common sense? Minerva Anestesiol, 77(1), 59–63.

前から好きだったNo Sedation vs DISの研究をやったStrøm氏の論考。(このstudyに関しては、http://www.jseptic.com/journal/cat24.html 参照)

言っていることは、ケア提供者のニードに合わせて鎮静管理をするのではなく、患者のニードに基づいて治療やケアを調節しましょう、ということです。この文章の背景からは、Strøm氏の患者観に関する強い信念が伝わってきます。無鎮静あるいはコミュニケーションが明確にとれる浅い鎮静での管理は患者のニードを知る最善の方法ともいえる。人工呼吸期間とか、そういうアウトカムだけでなく、患者のニードを知るためにも、コミュニケーションができるような鎮静管理が求められているのかもしれません。

マンパワーやいろいろな問題があるとは思いますが、患者観がしっかりしているのっていいですよね。

インシデント対策に関して

重要なことは、個人を攻撃して起こってしまった誤りをとやかくいうのではなく、システムを安全に確保できる方向に設計し直し、将来のエラーを減らすように専 念することである。もちろん、個人の不注意をそのままにしておいてよいというわけではない。人は注意深く行動しなければならないし、その行動に責任を持た なければならない。だからといって、エラーが生じたときに個人を責めるだけではシステムの安全化にとっても同じようなエラーを起こすことを防ぐ上でも効果 は低いのである。
「人は誰でも間違える」より。



そ うそうインシデントのときに、それを起こした本人を公開の場でさらし上げる文化ってあるらしい。起こした本人に勉強会をやらせたりしてね。それって何か違 わないかい?だいたい知識不足が原因にしても、起こした本人に勉強会を行わせるというのはおかしいくないですかね(ってことはそれを受ける他の人は勉強会 を受ける必要のある人、つましその知識を知らないってこと?)。むしろ研修を受けさせるなら分かるが。


ICU でかなりおおきなインシデントである自己抜管だって、再挿管率は50%程度だと言われてるしね。抑制だって抜かれちゃまずい人とそうじゃないひとがいるで しょう。それを見分けないで一律抑制もねえ(個人的にはフローチャートで正しい判断ができるかも疑問があるんだが)。抑制は倫理的な問題をかなり含んでいるんだから、それらも考慮して考えて欲しい。インシデントが増えたからとにかくよくないっていう管理の人をみると愕然としてしまうよ。


だいだいインシデントを起こした本人が一番落ち込んでいることが多い(いや、開き直る人もいるかもしれないけど)のに、さらし上げるとは。絶対やっては行けないことだと思う。こういうのがインシデント恐怖症をつくり、抑制過剰に繋がるんじゃないかな。

閉鎖式吸引ってやっぱり痰が取れにくい気が・・・

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1990年代の研究を見ると喀痰のとれる量に差は見られないという結果でした。
でも取れない気がするという質問がありましたのでその話題をひとつ。


2000年に入ってからは開放式とくらべて取れにくいよという研究もちらほらとみられています。

そのひとつがこれ
Lasocki S, Lu Q, Sartorius A, Fouillat D, Remerand F, Rouby JJ: Open and closed-circuit endotracheal suctioning in acute lung injury: efficiency and effects on gas exchange. Anesthesiology 2006, 104(1):39-47.
急性肺傷害の患者で行われていて、開放式の方が痰が取れるけど合併症(酸素化の低下など)は出やすいですよという結果でした。


でもって、痰の取れにくさは呼吸器の設定によって違うんじゃないかというのを調べたのがこれ

Lindgren S, Almgren B, Hogman M, Lethvall S, Houltz E, Lundin S, Stenqvist O: Effectiveness and side effects of closed and open suctioning: an experimental evaluation. Intensive Care Med 2004, 30(8):1630-1637.

結果はどうかというと・・・・

開放式吸引と、PCV(吸気圧28、PEEP10cmH2O程度)、VCV(TV450、PEEP5)、 CPAP10cmHOでの閉鎖式吸引は喀痰吸引量が低かった。CPAP0cmH2Oだと、ほとんど吸引量に差は無いため、吸引システムそのものの差ではない(閉鎖式システムを使用しているがほとんど開放式みたいなものだから)。したがって、PEEPなどの呼吸器フローがあると閉鎖式では痰が気管の奥に押し込まれて取れないのではないかとの考察でした

ただしこの研究はヒトではなく、模擬肺を使用している上に、痰は石鹸、吸引は律儀にプロトコールを守っていて、気管チューブから2cm程度先が出るように挿入している。こういった設定も結果に影響していそうだなと思いました。

なんとなく、最後のまとまりが悪いですが…

覚醒した気管挿管患者に身体抑制?

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前回のJSEPTIC看護部会のアンケートでは、約7割の施設で覚醒し、穏やかで指示が入る気管挿管患者の半数以上の身体抑制を行うという結果でした。

で、もうひとつの結果。
「覚醒した気管挿管患者に対し見守りがない場合でも抑制をはずしますか?」

「抑制を外すことが多い」のは約2割。
「抑制をすることが多い」のは約8割。

多くの場合、家族や看護師が見張っていなければ、覚醒していて、穏やかでも抑制をするという結果。

ここで、これらを組み合わせて検討してみる。
すると面白いことに、
覚醒し、穏やかで指示が入る気管挿管患者には25%以下しか抑制しない(つまり、あまり抑制しない)という施設のうち7割は、覚醒した気管挿管患者に対し見守りがない場合でも抑制を外すことが多いと回答している。
逆に覚醒してても75%以上身体抑制やらせてもらいますよ、という施設では、「覚醒した気管挿管患者に対し見守りがない場合でも抑制を外すことが多い」と答えたのは2%程度。

あたりまえの結果かもしれないけど、面白い。
抑制しないようにするためにはマンパワーが必要、というけど、なぜマンパワーが必要かというと、抑制を外した場合、誰かが自己抜管しないか見張っていなければならないから。
もし、覚醒して穏やかな気管挿管患者には抑制も見張りもいらなかったら?
今回の結果からは抑制が少ない施設は、人数が多いために見張っていられるということではなく、見張れなくても抑制を外す現実が伺える。

そうなるとマンパワーの問題とは言えなくなる?

CAM-ICU? ICDSC?

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最近ICDSCに関する質問があったので、立て続けですが。。

どちらが感度が高いか、特異度が高いか、などの議論は前に書いたとおり。
基本的には施設の特性にあわせて選べばいいだけ。CAM-ICUもICDSCもかなり研究で使用されているし、それなりに妥当性のあるツールだといえる。何もやらないよりはやった方がよかろうと思う。

では、うちの施設では?というとCAM-ICUを使っている。なぜか?

せん妄のスクリーニングツールを使用するひとつの目的に、どのくらい予後を反映するかということがある。論文でも、この患者層にせん妄スケールが使えるのかな?ということを評価する際、死亡率を当てはめて、せん妄陽性の患者で死亡率が高かったから使える!となったりする。せん妄は多臓器不全のひとつの表現型だという考え方が主流なので、そういうことになるらしい。

しかし、看護師がせん妄を評価する動機って、そういうことかな?と思う。せん妄それ自体を診断するのではなくって、知りたいことはその患者が説明を理解したり、記憶を保持したり、予測外の行動をとるかどうか、ということだったりする(簡単にいえば、ラインを抜いたりする危険があるか)。これはせん妄と同義なのかもしれないけれど、全く一緒じゃない。これは「せん妄」に関する主流な議論とは違うのかもしれないけれど、せん妄の評価を行う主な動機は、身体拘束の必要性を判定したりするところに実はあると思う。

そこを素直にみないと、せん妄評価を導入したのはいいけど、どうやって看護に活かせるのかがわからない、ということになるんじゃないかな、と思う。

で、説明を理解したり、記憶を保持したり、予測外の行動をとるかどうかを判断するには、CAM-ICUの方が適している(直接患者に質問をするので、感覚的に当たっている感がある)ような気がする。自分たちが見たいのは予後とか、多臓器不全のことじゃないんじゃあないかな、と(それは主流な意見じゃないだろ、というのも分かります)。
実は同じ方向を向いているはずの、導入したい医師と看護師の間に動機のギャップがある気がする。

まあ、どちらを使ってもいいんです。それが何か看護実践に活用できるのであれば。

鎮静の中断時のICDSCは?

鎮静中断で深く鎮静されていた患者が覚醒してきた場合、ICDSCの「症状の変動」は陽性になるのか?という質問がありました。
こういうのは、元文献に書いてあることに忠実に従うことが必要となるかと思います。なので、陽性になると思います。これはCAM-ICUのfeature 1も同じかと。どのような理由があったとしても、すぐに覚醒する睡眠状態ではなく、意識レベルが低下している状態から覚醒状態(すぐに覚める睡眠も含めて)になる場合は陽性かと思います。

もし違うんじゃないかという意見がありましたら、教えて頂ければありがたいです。

グローブ、ガウンの汚染

いつもと変わったところで、感染管理ネタ。
多剤耐性菌保菌者の部屋に入った場合、どの程度グローブ、ガウンが汚染されるか。


Morgan, D. J., Rogawski, E., Thom, K.  et al. (2012). Transfer of multidrug-resistant bacteria to healthcare workers’ gloves and gowns after patient contact increases with environmental contamination. Crit Care Med, 40(4), 1045–1051.

ガウン→2.3-12.6%。
グローブ→10.0-29.3%。
グローブを脱いだ後の手指→1.7-4.2%

グローブ、ガウンともにそれらの一部から検査したデータであって、それ以外が汚染されていない訳ではないことに注意。

部屋からでてきた時に、グローブあるいはガウンから多剤耐性菌(MDRO)が陽性であった場合、そうでない場合で、部屋でなにをしたかを調べたところ、
陽性であった場合、
①フィジカルイグザミネーション
②5分以上在室していた
③4回以上患者に触れた
④創傷処置
⑤人工呼吸器の操作
を行っていたことが有意に多かったらしい。また、MDRO陽性になった場合、その部屋の環境が汚染されていることが多かった。

多変量解析の結果では、
①フィジカルイグザミネーション
②5分以上在室していた
③環境汚染
④人工呼吸器の操作
がガウン、グローブからMDRO陽性となる危険因子として挙った。

人工呼吸器は結構危険!!特に、いろいろな人が触るので要注意ですね。

レベルの高いICU?

よくレベルの高いICUって聞きますけど、どんなのがレベルが高い何でしょうねー。
ここをよくよく考えねば。

例えば、

どの看護師もAaDo2を計算できて、聴診も上手で適切なRecommendをしてくれる。
P-V loopを解析して適切なRecommendをしてくれる。

いいですね。もし全員が正しくそれができれば患者への医療の質もあがるかも。でもそういうところってそんなにないのではないでしょうか。

もしあったとしても、
身体抑制を最小限にしています。
手指衛生は完全です。

ってところはもっと少ないかも。もし、
みんながP-V loopを解析して適切なRecommendをしてくれる、というICUがあったとして(P-V loopの有用性は別な議論ね)、でも、抑制をすごくしてたらどうだろう。また、手指衛生はいまいちだったらどうだろう。

私たちは、できるだけ良いICUを目指したいと思う。そのためには、手指消毒とか、身体抑制とか、そういうことを真剣にやらなければならいんじゃないかなあ。アニオンギャプより。違いますかねー。


体位交換の前に吸引?

最近、体位交換前に吸引するのは必須だ!という意見を聞くことがありますが、それにはどの程度の裏付けがあるのでしょうか。

確かに、体位交換時には気管チューブも動くし、頭位もかわるので、そのときにカフ上部の分泌物がたれ込む可能性があると思います。
でも、
「そうすべき!」
「そうした方がいいかもねー。」
「どちらでもいいよ」
と推奨レベルにはいろいろあります。特に臨床で注意するときには、その辺を区別しないといけないのだろうなと思います。明確な根拠もないもので、すべき!!と怒られてもみんなやる気なくしかねないし。

「体位交換前に吸引する」の文献は、

Chao, Y.-F. C., Chen, Y.-Y., Wang, K.-W. et al. (2009). Removal of oral secretion prior to position change can reduce the incidence of ventilator-associated pneumonia for adult ICU patients: a clinical controlled trial study. J Clin Nurs, 18(1), 22–28. 
簡単にいえば、体位交換前に口腔内を吸引するとVAPが減ったという論文なのですが、いろいろとつっこみどころがあります。 対象は48時間以上人工呼吸を行った、159人の介入群と102人の対照群です。これはRCTではなく、いわゆるbefore after studyです。beforeとafterの差はあまりないから、まあいいとして、問題は、肺炎の診断基準が全く明確じゃないこと。第三者が検討したのか、何をもって肺炎を疑ったのかなど重要なアウトカムの判定が不明。 結果、VAPの発生率は、介入群、対照群で4.9% vs 15.1%。Ventilator Dayでの解析はなし。くわしくは論文をみて欲しいのですが、何か微妙。 個人的には、ここで飛びついて「体位交換の前には口腔内の吸引をすべき!」とは言わないかな。
そもそも口腔内吸引ではカフ上部の吸引はあまりしっかりできない気がするんですけどねー。どうなんでしょう。

Chemical Restraint?

Chemical Restraintー直訳すると化学的抑制という言葉がある。
ちなみに身体抑制はPhysical(身体) Restraint(抑制)。
Chemical Restraintとは薬を使った抑制、つまり鎮静薬を使用して動かなくすること。
倫理的には、Physical RestraintとChemical Restraintは同等らしい。

イギリスではPhysical RestraintよりもChemical Restraintを好む傾向にあるとのこと。
なぜなら、Chemical Restraintの方が”ケアリング”にみえるから、ということ。

確かに欧州で身体抑制の現状を調査したSPICE studyでもイギリスでの身体抑制は0%だ。

マンパワーの問題だけなのか、他に何かあるでしょうか。
これとはあまり関係ないかもしれないけど、インシデントへの恐怖は身体抑制を後押しするひとつの要因な気がします。(最近の讃井先生のtweetにもありましたが。) 医療安全上は、インシデントやアクシデントの原因を個人の能力に帰属させないというのが常識だとは思うのですが、施設によっては個人(その能力)に対して攻撃を加えるところもあるらしい。 まずは、医療安全上の問題を個人の能力ではなくシステムの問題だと捉えることから初めかればいけないのかもしれませんね。もしかしたらマンパワーよりこちらが重要なのかも。
自己抜管がおきたら
①再挿管をしたのかどうか?(再挿管が不必要なのであれば、不必要な挿管が行われていたことになる。つまり、早めに抜いてくれればこのアクシデントは起こらなかった。)
②身体抑制が行われていても、そうでなくても、評価が行われているか。具体的にはCAM-ICUの評価が適切に行われていたか。
を見直す必要があります。
ほとんどの自己抜管の患者は身体抑制が行われています。身体抑制が行われていても自己抜管は起こるんです。


Benbenbishty, J., Adam, S., & Endacott, R. (2010). Physical restraint use in intensive care units across Europe: the PRICE study. Intensive & critical care nursing, 26(5)…

鎮静がせん妄評価に与える影響

鎮静がせん妄の大きな原因だと言われています。
実際に評価してみると、鎮静薬の投与により反応性が低下し、せん妄評価で陽性となることがよくあります。これは鎮静薬によるものであり、なにも「せん妄」じゃないんじゃないか?と思われるかもしれません。

教科書的には、鎮静薬によるものでも、せん妄はせん妄になります。なので、せん妄の発生率が報告されている場合、ほとんどは、鎮静薬によるせん妄 (Sedatives Induced Delirium)、敗血症によるせん妄 (Sepsis Induced Delirium)などが入り交じった値なのです。

この辺を実際に検討したグループがあります。


Haenggi, M., Blum, S., Brechbuehl, R., Brunello, A., Jakob, S. M., & Takala, J. (2013). Effect of sedation level on the prevalence of delirium when assessed with CAM-ICU and ICDSC. Intensive Care Medicine, 39(12), 2171–2179. 

この研究では鎮静中断中の患者に対し、CAM-ICUとICDSCを評価しました。評価時のRASSが-2〜-3であった場合と-1以上の場合で分け、せん妄の発生率を出しました。
結果は、CAM-ICUの結果で言うと、
すべての患者における陽性率は53%でしたが、RASS -2〜-3の患者を省くと陽性率は31%まで低下しました。これはまあ、予想通りの結果だと思います。

ここで面白いのは、RASS -2〜-3で陽性率が高くなるのであれば、せん妄の評価をするときには同時に鎮静深度を記録すべきではないかということ、過去の公開されているせん妄発生率には鎮静深度に関して詳しく述べられていないものが多く、対象とした患者層の鎮静深度によってせん妄発生率が変化するのではないか(鎮静深度を考慮して発生率を眺める必要がある)ということ。

著者らは、鎮静薬により意識レベルが低下し、反応が低下している患者はせん妄なのか?という疑問をそれとなく提示しています。

それらの患者は、「鎮静が残っている」のか、「せん妄」なのか?
頭がこんがらかってきます。

CAM-ICUとICDSCどちらが良い?

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ICUにおけるせん妄のスクリーニングツールとしては、CAM-ICUとICDSCがメジャーどころです。これから導入するに当たってどちらがいいのでしょうか?

それぞれの特徴を主観も交えて解説すると、

CAM-ICU
良い点:
多くの論文で使用されている(ICDSCも使用されているが、CAM-ICUの方が多いと思います)。
ピンポイントで今せん妄かを評価することができる。
悪い点:
患者に質問しなければならないため、手間がかかる。
場合によっては、失礼な?質問をしなければならない。怒る患者もいるかもしれない。
陽性、陰性しかわからないため、重症度に関しては分からない。
ピンポイントでの判定しかできない。

ICDSC
良い点:
患者の協力が得られず簡便である。
ピンポイントでなく、ある一定の時間におけるせん妄の有無を評価できる。
点数化されているため、重症度をなんとなく知ることができる(真の意味で重症度が直線的に表されているかは置いておいて)。
悪い点:
CAM-ICUに比較するとマイナーである。
ピンポイントで今現在の評価をできない。


で、それぞれ、どのくらいせん妄を正しく評価できるのでしょうか。
メタアナリシスしている研究があるので、それを見てみましょう。

Gusmao-Flores, D., Salluh, J. I., Chalhub, R. A., & Quarantini, L. C. (2012). The Confusion Assessment Method for the Intensive Care Unit (CAM-ICU) and Intensive Care Delirium Screening Checklist (ICDSC) for the diagnosis of delirium: a systematic review and meta-analysis of clinical studies. Crit Care, 16(4), R115. doi:10.1186/cc11407
PMID: 22759376



CAM-ICU:感度 0.80 (0.77-0.83)、特異度 0.96 (0.95-0.97)
ICDSC: 感度 0.74 (0.65-0.81)、特異度 0.82 (0.76-0.86)

感度、つまりせん妄で…

末梢を温めることに意味はあるか?

成人患者で末梢が冷たい場合、末梢を保温したりしますよね。それって効果があるのでしょうか?

効果があるかを考えるには、その保温という行為の目的がはっきりしないといけません。目的はいろいろなのでしょうが、まずは末梢の循環を改善する?ということを考えたいと思います。

私たちが使用するホットパックで末梢循環は改善するかもしれません。それはある種のパルスオキシメトリーについているPerfusion Indexや、それまでうまくひろわなかったSpO2が表示されるというような場面で実感することがあります。しかし、これらは大きい目で見た循環動態や予後を改善するかというと、どうでしょうか。それを示した研究は私の知る限りありません。

実は看護師が行う末梢の保温は、これらの目的だけでなく、別の大きな目的があるのではないでしょうか。それは循環の改善等の大きな目的を達成するわけではなく(多少の期待はしているかもしれない)、シンプルに手足が冷たい、ゆえに、保温するということです。
手足が冷たい=つらいこと、なので、つらさを緩和しよう、ということですね。

なので、末梢を温める行為の目的は、生理学的な何かの改善のみにあらず、なのではないでしょうか。辛そうだからそれを緩和したいという看護師の優しさだったりするのかもしれません。それはそれで、よい話なのではないかなと思います。

身体抑制アンケートの感想

結果をまとめると

①身体抑制は覚醒している気管挿管患者では頻繁に行われている。
②抑制していないことが多いという施設でも、その間は看護師が付きっきりで監視している。
③覚醒している気管挿管患者で、25%以下しか抑制をしないと答えた施設では、看護師や家族が見守りしていなくても抑制しないと答えた施設が多かった。つまり覚醒した患者に抑制をあまり施設では、抑制がなくとも見守りもしないことが多い。
④深鎮静の患者に対しても抑制していることが比較的多かった。
⑤覚醒している患者に対し抑制しているかどうかと患者対看護師数を比較すると、有意な差は無かった。

⑤は、マンパワーが身体抑制するか否かに関連していないことを示唆しています。
これはどういうことかというと、③から分かるように、覚醒患者に抑制をしない施設は、マンパワーに頼っているのでは無いということになります。

「挿管患者は目を離しては行けない」と思う施設では、「覚醒している気管挿管患者で、25%以下しか抑制をしない」を聞くとマンパワーの問題だという意見が出ると思いますが、実は「覚醒している気管挿管患者で、25%以下しか抑制をしない」ことができる理由はマンパワーがあるわけではなく、「挿管患者は目を離しては行けない」と思っていない、つまり抑制していなくても自己抜管が起きないと思っているからだと思います。

本当に覚醒していて、抑制をはずしても自己抜管しないのでしょうか?たぶんしないので困っていないのだと思います(厳密には自己抜管を調べる必要があるでしょうが)。

難しいですね。でも私たちの思い込みによって不必要な抑制が増えるのであれば、どうにかしたいですね。



動脈圧・中心静脈圧などの測定方法

Q:動脈圧(ABP)や中心静脈圧(CVP)などはベッドをフラットにして測定した方がいいですか?心不全や頭部外傷の患者さんに対しては、モニタリングで負荷がかかるように思います。また、頭部挙上したままABPを測定する場合、再度0点校正をした方がよいですか?


A:個人的には、ベッドをフラットにしても、問題がないと思われる患者さんならば、フラットにして測定しています。

ベッドの頭部挙上の角度が、APBやCVP、スワン・ガンツカテーテルでの心拍出量など測定値に影響を及ぼすかに関しては、あまり多く研究されていません。

数少ない知見では、0度、30度、45度の間で、心拍出量を除く他のスワン・ガンツカテーテルの測定値に差はなかったとされています。心拍出量も臨床的に考えると大きな影響のない範囲であったとされています

Wilson AE, Bermingham-Mitchell K, Wells N, Zachary K. Effect of backrest position on hemodynamic and right ventricular measurements in critically ill adults. Am J Crit Care. 1996 Jul;5(4):264-70. PMID: 8811148

もちろん頭部挙上した状態での測定では、トランスデューサーを0点校正した体の位置に調整し直す必要があります。 0点校正とは、モニターに血圧が0mmHg となる位置を記憶させる作業です。一度覚えさせてしまえば、位置を調整後に再度0点をする必要はありませんので、位置を調節するだけでかまいません。個人的には、ABPの測定値が正しいかどうか評価するために、勤務のはじめに0点校正と参考値としてのNIBP(カフ血圧)を測定しています 。

気管挿管患者への身体拘束に関するアンケート

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気管挿管患者に対する身体拘束に関するWebアンケートの結果です。ICU、HCUで勤務する104人からの回答をいただきました。ありがとうございます。 重複した施設や施設名未記入の回答を省き、92施設の方からの結果を分析しています。 細かい分析はまた別にということで、全体のざっくりとした結果を報告します。













VAP予防:夜間も頭部挙上しなければならない?

特に意識状態の良い患者では、本人の体位の好みがありますよね。もっと頭を下げてほしい、とか、もっと挙げてほしいとか。
VAP予防の観点で言えば、頭部挙上30°から45°がガイドライン等で推奨されています。でも本人の好みとこの推奨がぶつかってしまうことは良くあることではないでしょうか。どのように考える必要があるでしょうか。
原理原則で言えば、VAP予防のためには、夜間も含めて頭部挙上を維持する必要があるということになります。理屈上、頭部挙上がなされない時間が長いほど、VAPの リスクは高くなるはずです(あくまでの理屈の話です。研究として頭部挙上の時間とVAPのリスクの関連性は分かっていないと思います)。

しかし、特に浅い鎮静管理が推奨される現在、患者の体位に関する「好み」を無視して頭部を常に挙上し続けることは難しいのではないかと個人的 に思います。

45°頭部挙上が仰臥位と比較してVAP発生率を低下させるというRCTが出てから14年も経過しています。その頃とは鎮静管理の方法もかな り違うと思いますし(例えば患者の嚥下機能も違うんじゃないかと思うのです)。現在の管理の方法で、同じような研究を行った場合、同じ結果が出るとは限らないわけです。また、もともとの論文は0°と45°を比較するという割と極端な比較であって、たとえば20°と30°では違うか、は明確な結論は出ていません。実際に45°を

なので、本人の好みが分からない(つまり意識障害があったり、深い鎮静下の患者)場合は、できるだけ頭部挙上を維持する。浅めの鎮静の場合、 頭部挙上をおすすめするけれども、本人のとりたい体位を考慮にいれる、ということでよいのではないかと感じています。

みなさんの施設ではどうなんですかね。(少し聞いてみたところ、本人の好みを結構優先しているような印象でした)


Drakulovic, M., Torres, A., Bauer, T.et al. (1999). Supine body position as a risk factor for nosocomial pneumonia in mechanically ventilated patients: a randomised trial. Lancet, 354(9193), 1851–1…

鎮静とせん妄に関する間違い トップ10

なかなか面白いレビューがでたので紹介します。



鎮静とせん妄に関する間違い トップ10
①すべての人工呼吸患者には鎮静薬が必要である。 ②鎮静が深い患者にケアするのは簡単である。 ③外科系のICU患者のみが疼痛を経験する。 ④鎮静薬は睡眠を促進する。 ⑤せん妄はICUに滞在することによる合併症である。 ⑥せん妄の評価や気づきは、評価者間で一定である。 ⑥ICUにおけるせん妄は類似しており、薬剤で効果的に対処できる。 ⑦一日一回鎮静を中断するのは危険である。 ⑧鎮静薬や鎮痛薬は蓄積しない。 ⑨深鎮静や記憶の喪失は精神的なアウトカム、特にPTSDを改善する。

Peitz, G. J., Balas, M. C., Olsen, K. M., Pun, B. T., & Ely, E. W. (2013). Top 10 Myths Regarding Sedation and Delirium in the ICU. Crit Care Med41, S46–S56. 

夜間鎮静を深めることに効果があるか? Part 2

Part 1では、鎮静深度を深めるということが、生理的な睡眠を促進していることになるか、という観点から論文の紹介をしました。
今回は、Part 2ということで、せん妄やSBTの成功率あたりの観点から、2012年、Critical Care Medicine誌から出た研究を紹介します。

140人の12時間を超えて人工呼吸を受けた患者を対象にし、研究参加から4日間、「夜の平均鎮静薬投与量マイナス昼の平均鎮静薬投与量」−つまり、夜間に鎮静薬を増量するとプラスに傾く−と様々なアウトカムの関連を見ています。

以下結果です。

*どのくらいの患者で夜間鎮静薬を増量していたかというと、3日目の時点で、ベンゾジアゼピンを投与されている患者の33%、プロポフォールを投与されている患者の59%。

*昼間のプロポフォール投与量とせん妄発生は統計学的に有意な関連はないものの、投与量が多いほどせん妄のリスクが高まる方向にある。
*昼間のベンゾジアゼピン投与量とせん妄発生には有意な関連がある。

*夜間のベンソジアゼピン増加と次の日のせん妄発生には有意な関連あり。
*夜間のプロポフォールと増加と次の日のせん妄発生には有意な関連はない。

夜間のベンゾジアゼピン増加は翌日のSBT失敗率上昇と関連している。
夜間のプロポフォールと増加は翌日のSBT失敗率上昇と統計学的に有意な関連はみられない。

他にもいろいろ結果はあるんですが、お腹いっぱいになるので、とりあえずここまで。

鎮静薬はやはり鎮静薬。リズムをつけたからといってせん妄を予防するわけではない(ベンゾジアゼピンでは逆にリスクを増加させるし、プロポフォールでもせん妄を予防する方向に働くわけではなく、有意な差はないものの、せん妄発生を促進する方向に働くようにみえる)。

SBTに関しては、鎮静が「残る」ことが関連しているようですね。
興味深い結果です。ではどうしたら?という答えはここではでません。

少なくとも鎮静を夜間増加させて眠っているように「見えれば」、昼夜のリズムがとれて、せん妄も少なくなるんじゃない?
という意見は妥当ではない。ということですかね。


Seymour, C. W., Pandharipande, P. P., Koestner, T., Hudson, L. D., Thompson, J. L., Shintani, A. K.…

夜間鎮静を深めることに効果があるか? part 1

昼と夜で鎮静深度を変化させる(夜間は深く鎮静する)のは、日常的に行われるpracticeであると思いますが、それは本当に効果があるのでしょうか?
この効果というのは、何かと考えてみると、夜間、きちんと眠れた気がするとか、生理的な睡眠が促進されるとか、サーカディアンリズムが整えられて、せん妄が減少するとか、そういうことが考えられます。では、それらの「効果」が本当にあるのでしょうか?
ここでは、生理的な睡眠が促進されるか、という研究結果を紹介します。

http://www.jseptic.com/nursing_paper/pdf/np_001.pdf

鎮静を深めれば良いという単純な話でもないみたいですね。。

NPPV装着時の口腔ケア(呼吸状態が悪い場合)

NPPVを外して口腔ケアをする時に、SPO2が下がる場合の方法ですが、 しない訳にはいかない理由は 1.痰が口腔内に溜まっている場合がある 2.口腔内が乾燥して不快となっている場合がある 3.マスクの圧迫で褥瘡となっている事に気がつけない事がある。 などがあります。 
私が当院で推奨している方法ですが、  1)オーラスバランスなどのジェル製剤を口の中に塗布すし、直ぐにNPPVを装着する 2)5~30分放置 3)リザーバーマスクの準備及び、口腔内洗浄液を浸したガーゼを棒に巻いたものを準備 4)NPPVを外して、リザーバーマスクに変更し、ガーゼ棒で口腔内を拭う  5)一回したら、NPPV装着、SPO2のリカバリーを確認。  6) 4)と5)を繰り返す。 7)最後に保湿ジェルスプレーを口腔内に噴霧する。
*上記は、シビアな低酸素血症でNPPVを短時間しか外せない人の方法として推奨 しています。

*7) の保湿ジェルスプレーはNPPV利用者、にはとても効果的なものです。口腔ケアの時だけでなく、吸引時など、マスクを外すたびに1~2プッシュしておくと、口腔内の保湿が保たれ、口腔ケアする時間自体が短縮しますし、乾燥の不快感の軽減や吸引チューブの滑りがよくなります。オススメです。

患者、家族が治療の限界を感じ、終末期医療を求めているが、治療側は治癒するのでは?というジレンマの対応について

例えばNPPVを行っている場合を例にしてみます。 私もこのような患者の方針について、医師や看護師から相談を受ける事があります。治療の方向性や勝率を冷静に医師とディスカッションします。具体的な治療計画、その治療の勝算を患者や家族の価値観はとりあえず置いておいて、冷静に検討します。 その上で、今、対症療法している(例えばNPPV)についてどの位耐えれば良いのかを、これも冷静にディスカッションします。 で、もしその勝率が悪いと判断すれば、患者の価値を尊重した生き方を支援すべきと思います。 緩和というのは、治療を継続している時から開始すべきであり、このNPPV療法であっても、苦痛緩和として、緩和的な介入を開始するの は必須だと個人的には考えます。これ以上の治療について手を引くかということについては、医師の見解と患者の価値感(患者の価値感を代行できる他者含め)を多くの時間 をかけて、検討すべき内容だと考えます。答えはその人だけのものであり、悩むプロセスが大事と考えます。 患者本人が望んでいなくても、家族が積極的な治療を望む場合もありますね。本人の思いを家族に考えてもらって、より患者の価値観にそった医療 が提供できるようにしっかり話し合うことが大切だと思います。

急性心筋梗塞、PCI後は心筋酵素のピークアウトまでケアは控えるべき?

AMIなどの場合は心筋酵素(CK,CK-MB,GOTなど)を測定して心臓のダメージを評価します。心筋酵素のピークアウトについてもCKであれば通常24時間ですが、再還流などの処置をした場合は12時間までに短縮されます。

PCI後は、稀とはいえ、再梗塞のリスクがあります。CKが低下する(ピークアウトする)ことによって、再梗塞は大丈夫そうだという判断をします。そのため、循環器内科の医師としては、ピークアウトをみるまではケアは控えてほしいと言うかもしれません。

こういった状況の中で、命がけでケアをするメリットはそれほどないかと思います。ケアを後回しにできるのであれば、ピークアウトするか評価してからでも遅くないですね。午前中にしようと思っていた清拭などの処置を午後にずらす、もしくは顔や手だけを拭くといった事は悪い事ではないかと思います。

清拭でどのくらい患者に負荷がかかるのかはケースによって異なると思いますので、やっても大丈夫な例もたくさんあるでしょう。しかし、ピークアウトまでにかかる時間はそれほど長いものではありません。その間くらいは”ルーチン”な清潔ケアは少し遠慮してもよいのでは、と思います。それで失うものはそんなにないはずです。

加圧バッグ作成時、ライン内にエアを入れない方法

A-lineなどに使う加圧バッグ、ラインをプライミングする時に細かいエアが入って困ることはないですか?
あれ、作成時に一手間かけると随分エアが少なくなります。
エアがたくさん入るのは、プライミングするときの速度が速いときなんです。加圧バッグで圧を300mmHgまであげたあとにフラッシュしてプライミングすると細かいエアを巻き込みやすくなります。
そこで、1番いいのは加圧バッグの圧はかけずに、フラッシュバルブを開いてプライミングする方法です。
でも、それでは全く圧がかかってないので、プライミングに時間がかかりすぎる。そこで、加圧バッグの圧は一度、100-150mmHgくらいにあげてからプライミングし、そのあと300mmHgまであげるといい感じになります。

A-Lineの加圧バックへのヘパリン混注

A-Lineの加圧バック用の生理食塩水にはヘパリンは混注すべきか?
A-Lineの加圧バック用生理食塩水にはヘパリンを混注した方がいいのですか?また私たちの施設では、1000単位=1㏄のヘパリンを混注しているのですが?少なすぎないのか、どれくらいならいいのか?


確かに、よく考えるときになることですね。あまり多くの研究がなされているわけではなさそうです。1つのRCTと、他に発表されている研究のまとめがあります。続きはJSEPTIC看護部会のHPでどうぞ


http://www.jseptic.com/nursing_paper/

T-piece vs PSV

SBTをT-pieceで行った方がよいのか、PSVで行った方が良いのか?
T-pieceで行った方が負荷は強いけれど、抜管(再挿管にならない)のスクリーニングとしては信頼できそう。T-pieceに耐えれたなら大丈夫!的な。でも実際はどうなんでしょうか。

誰しも持つ(持たない?)疑問ですが、1997年にそれらを比較したRCTが発表されています。続きはJSEPTIC看護部会のHPでどうぞ。

http://www.jseptic.com/nursing_paper/

ルーチンの清拭は意味があるか?

清拭にはいろいろな意味があると思います。「伝統」「爽快感」「家族の見た目」「感染予防」。感染予防の観点から言えば、2%クロルヘキシジンによる全身清拭はBSI低下に役立ったとか、そういう論文も最近はみかけます。

清拭だけでなく、なんでもそうかもしれませんが、高い価値をおく人もいるし、それほどでもないひともいる。毎日髪を洗わないと気持ち悪い人とそうでないひとの違いです。習慣や価値観からきている問題ですので、なかなかむずかしいです。患者側のニードもそれぞれですし。

個人的には、時間があれば体をきれいにし、服を着替えさせたい。でも、命をかけてまでそういうことはしなくて良いと思う。

家族に対しては?(家族がよく触る)手をきれいに洗ったり、全身清拭以外でもやれることはあると思う。私見でした。


実施基準などはエビデンスに裏付けられるものはないと思います。



Bleasdale, S. C., Trick, W. E., Gonzalez, I. M., Lyles, R. D., Hayden, M. K., & Weinstein, R. A. (2007). Effectiveness of chlorhexidine bathing to reduce catheter-associated bloodstream infections in medical intensive care unit patients. Arch Intern Med, 167(19), 2073–2079. doi:10.1001/archinte.167.19.2073

Tube Compensationとは何?

Tube Compensation (TC)とは、気管チューブの抵抗のみを打ち消すモードです。
気管チューブは細くて長いので抵抗を生み出します。
抵抗を生み出すということは、気管チューブの遠位と近位ではかかっている圧が異なるということです。口元の気道内圧(回路内圧)では10cmH2Oの圧がかかっていても、気管チューブ近位(気管支部)では抵抗により圧が打ち消されて5cmH2Oくらいにしかなっていない可能性もあります。

TCでは、入力された気管チューブのID(内径)と長さ(気管チューブか気管切開かで選択)から、抵抗を予測し、気管支部で一定の圧を生み出すようにフローを制御します。
簡単に言うと、PSVではあくまでも口元の圧のみをモニタリングして補助をしているのに対し、TCでは抵抗を予測しつつ気管チューブの抵抗を打ち消すだけのフローの制御をしています。

TCはSBTに良く使用されるモードです。他の方法と比較し、有用であるという報告も多数存在します。


Reference


Unoki, T., Serita, A., & Grap, M. J. (2008). Automatic tube compensation during weaning from mechanical ventilation: evidence and clinical implications. Critical care nurse, 28(4), 34–42– quiz 43.

Transpulmonary Pressure (経肺圧)てなに?

Transpulmonary Pressure とは、肺胞内外圧較差のことです。
式で表すと、

Tpt = Palv - Tpl  

Tpt: Transpulmonary Pressure 、Palv: 肺胞内圧、Tpl: 胸腔内圧

です。肺胞内の圧から胸腔内圧を引いたものです。
例えば肺胞内圧=20cmH2Oのとき、自発呼吸も発生し、胸腔内圧が-7cmH2Oであれば、

20cmH2O-(-7cmH2O)=27cmH2O

がTranspulmonary Pressure になります。これにより、肺胞壁にかかる圧が分かるわけです。大きければ大きいほど肺胞は膨張する方に働くことになります。
最近では肺胞内圧よりもTranspulmonary Pressure が高いことがVILIと関連している、なんて言われてたりもします。

カフ上部吸引機能付き気管チューブ:吸引できる?

経験的に、うまく吸引できないということが多いですよね。吸引の方法の、専用の機械を使って間欠的に吸引する方法やシリンジを使用する方法もありますが、おもったより引けないなーというのが感想です。 2007年の研究では、48%で有効な吸引ができなかったとされ、この原因は、粘膜が吸引孔にくっついてしまうことが挙げられています。ということはあまり高い吸引圧をかけると粘膜を損傷させる可能性があるということですね。 カフ上部吸引からうまく引けないのは普通。引けなくても吸引圧を過剰にあげないことが大切ですね。
Reference Dragoumanis, C., Vretzakis, G., Papaioannou, V., Didilis, V., Vogiatzaki, T., & Pneumatikos, I. (2007). Investigating the failure to aspirate subglottic secretions with the Evac endotracheal tube. Anesth Analg, 105(4), 1083–5, table of contents.

ICDSCは鎮静下の患者でも使えますか?

ICDSCは最初の論文でICUの患者全般でその信頼性(評価者間で一致するか)、妥当性(精神科医の診断と一致するか)が検討されているので、理論上は鎮静下の患者でも使えることになります(判定できない昏睡状態の患者を除く)。ICDSCが発表された最初の論文では、ICDSCに高い信頼性、妥当性が確認されていますが、人工呼吸患者のみを対象にするとその信頼性、妥当性は変化するかもしれません。

ちなみに、もともとICDSCが発表された論文ではその使用法の詳しい説明は省かれており、「こういうときにはどうすんの?」的な質問に対して正確な答えはありません。

Reference

Bergeron, N., Dubois, M., Dumont, M., Dial, S., & Skrobik, Y. (2001). Intensive Care Delirium Screening Checklist: evaluation of a new screening tool. Intensive Care Medicine, 27(5), 859–864.


CaO2、DO2とは?

動脈血酸素含量(CaO2)は1Lあたりに含まれる酸素の「量」を示します。実は、我々がみている動脈血酸素分圧(PaO2)は動脈血に溶存している酸素を見ているにすぎません。
血液中で酸素のほとんどはヘモグロビンと結合しているため、血液中の酸素の「量」を知りたい場合、ヘモグロビンを考慮に入れる必要があります。CaO2は以下の式で表すことができます。
CaO2=(1.34×Hb×SaO2)+ (0.003×PaO2)
この式で分かるとおり、血中に含まれる酸素の量はPaO2よりもむしろヘモグロビンと酸素飽和度(SaO2)に依存します。酸素飽和度はパルスオキシメーターで簡単に知ることができるのですが、意外と重要なことが分かりますよね。また、いくらPaO2が高値を示していても、ヘモグロビンが低ければ効果的でないことが分かります。
CaO2は動脈血中に含まれる酸素の量ですが、これは含まれているだけであって、実際に組織へ運ばれているわけではありません。実際の組織へ運ばれる酸素の量(酸素運搬量:DO2)は、動脈血酸素含量に心拍出量を掛けたものとなります。 つまり、 
DO2=CO×CaO2
となります。DO2は「デリバリーオーツー」と臨床では呼ばれることがありますので、覚えておくとお得です。
組織への酸素供給を考えるときには、酸素飽和度とヘモグロビン、それに心拍出量(CO)ですね。

せん妄のリスクとなる薬剤

せん妄のリスクとなるとされる薬は多種多様で、ICUで使う薬のほとんどじゃないか、と思うほどであるが、非常に重要なのはベンゾジアゼピン系の鎮静薬である。

人工呼吸患者を対象とし、ミダゾラムとデクスメデトミジンによる鎮静管理を比較した無作為比較試験では、ミダゾラムで鎮静管理を受けた患者の方が有意にせん妄の発生率が高かった。
Riker RR, Shehabi Y, Bokesch PM, et al. Dexmedetomidine vs midazolam for sedation of critically ill patients: a randomized trial. JAMA 2009;301:489-99.

同様に、デクスメデトミジンとロラゼパム(静注薬は日本未承認。)の比較でも、ベンゾジアゼピン系の鎮静薬であるロラゼパムで有意にせん妄が多いという結果が報告されている。

せん妄と不穏はどう違うか?

不穏の定義は、それほどしっかりしたものはありませんが、一般的に暴力的であったり落ち着きがない状況を示しています。一方、せん妄は、いくつかの症状が集まった状態のことをいい、その中には「注意力の低下」「症状の変動」「意識の変容」などが含まれています。
不穏はせん妄という判断をするときに必要な条件に入っていません。ちなみに、幻覚や妄想もせん妄という判断する必要条件には入っていません。

つまり、

1)不穏はかならずしもせん妄ではない。
2)不穏患者の中にはせん妄患者もいる。(過活動型せん妄)
3)不穏症状がないせん妄患者もいる。(低活動型せん妄)

ということになります。
暴れていても「せん妄」とは限らないので、注意力が低下していないか、等を評価する必要があるわけです。
ちなみに、せん妄のスクリーニングツール CAM-ICUに関してはこちらに詳しく書いてあります。
bilt.edu/icudelirium/docs/CAM_ICU_training_Japanese.pdf

SBT失敗後の換気モードは何がよいのでしょうか?

SBTに失敗すると、呼吸筋は疲労し、筋線維はダメージを受けるとされています。健常人のデータですが、呼吸筋に負荷をかけ、その結果低下した横隔膜の筋力が回復するには24時間以上かかるとされています。なので、十分に呼吸筋が休めるよう、A/Cなどのモードにするとよいと考えられています。


Reference Laghi, F., D'Alfonso, N.,et al. (1995). Pattern of recovery from diaphragmatic fatigue over 24 hours. J Appl Physiol, 79(2), 539–546.

Q & Aブログ始めました。

JSEPTIC看護部会では、素朴な疑問から素朴でない疑問に答えるべく、Q & A用のブログを作成しました。Q & A以外にも適した話題があればここで共有しようと思います。
今後ともよろしくお願いします。
なお、ここでのAnswerはあくまでも個人の意見であり、参考として扱って頂き、臨床で応用する場合には自己判断でお願いします。