適切な胃残量の基準は?

胃残量はいくつくらいになったら速度を変えたり速度を上げたりしていますかという疑問です。
 一般的には150mlから200mlくらいかと思うのですが、どうなのでしょうか。
誤嚥と胃残量の関係性には相反する結果が出ています。胃残量が多いことは誤嚥や肺炎に関連するという結果もあるし、そうでないという結果もあります。最近の研究では関連がないとしているのが多い印象があります。

下記の文献では、 胃残量のリミットを200mlとした場合と、500mlとした場合で、栄養の投与量や合併症に差があるかを検討しています。

J. C. Montejo, E. Miñambres, L. Bordejé, A. et al. To compare the effects of increasing the limit for gastric residual volume (GRV) in the adequacy of enteral nutrition. Frequency of gastrointestinal complications and outcome variables were secondary goals.  36 (8) 1386-1393 Pages 1386 - 1393 2010

研究のデザインは多施設RCTで、n(対象者数)=329です。対象は挿管、人工呼吸患者です。
経腸栄養はプロトコール化されており、両者の違いは 胃残量のリミットの違いです。

結果として、胃残量500mlの群は、
嘔吐、腹部膨満、下痢などの消化器合併症を増加させなかった。ただし、 胃残量増加という合併症は有意に低下した(リミットを変えているので当然)。

両群間で肺炎発生率、人工呼吸期間、ICU在室日数に差はなかった。

実際に投与されたカロリー/処方されたカロリー×100で表されるDiet Volume Ratio (Diet VR)は、
7日後、12日後では胃残量500mlの群で有意に高く、3週間後、4週間後では胃残量200mlの群で高かったが、有意な差はない(この理由はなぞ。ただ、データだけみると時間が経過するとともに個々のばらつきが多くなっている可能性あり)。


 この結果からみると、 7日後、12日後のDiet VRは500mlの群で有意に高いとは言っているけれども、それほど臨床的に大きな差はなさそうです。7日後は(84.48% vs 88.20%)。プロトコル化されているので最初のうちはばらつきがなく投与量を増加させることが両群でできているのだろうと思います(なので、4%程度の差で統計学的な差が生じる)。結果的にアウトカムに影響は与えていませんし。

ただ、わざわざ低い胃残量をリミットにする意味もないと思います。実践的には低ければそれだけ「ひっかかる」ことが多くなり、業務は煩雑になるのかなと思ったりもしますし。
日本ではどのくらいプロトコルを使用して看護師が栄養投与量の調節をしているのかはわからないのですが、完全なプロトコルが導入されていないとして、なんとなく、200mlあたりを上限としてひっかかった場合、医師に報告するのであれば、あきらかに500mlを上限とした方が業務的には簡単なのかなと思ったりもします。

あまり厳密なリミットにしても合併症が低下するわけではない。むしろ投与量は減っちゃうかもしれない。というのが言えることでしょうか。

コメント

このブログの人気の投稿

カフ圧計がないのですが・・・・

CAM-ICUとICDSCどちらが良い?

急性心筋梗塞、PCI後は心筋酵素のピークアウトまでケアは控えるべき?