スタッフが行う問題解決ーポジティブデビアンス

論文散策していたらある論文をみつけた。「あること」を行うと手指衛生の実施率が46.5から62.0%に上昇したという研究がある。これは手指衛生の話だけでなく、いろいろなエビデンスを実際の実践に活かす上で参考になるかも。特に多くのスタッフで成り立つICUでは研究結果はそのまま実践に繋がらない。それをいかに普及させるかが常に課題となる。


MD, A. R. M., MD, D. T. N., MD, A. J. W. C., MD, T. Z. S. C., MD, R. P. B., MD, M. S. D. J., et al. (2013). A multicenter study using positive deviance for improving hand hygiene compliance. American Journal of Infection Control, 41(11), 984–988. 


「あること」とは、
Positive Deviance (ポジティブデビアンス)という手法である。このセッションを取り入れることによって手指衛生の遵守率を挙げたらしい。
ポジティブデビアンスってなんじゃ?と私も思ったので、検索で引っかかったHarvard Buisiness Review (HBR)を早速取り寄せてみた。


http://www.amazon.co.jp/Harvard-Business-Review-ハーバード・ビジネス・レビュー-2005年/dp/toc/B000AMI0BE


するとこういうことらしいと(推測)。
スタッフの行動を変異させるのはとても難しい話で、それらに関しては様々なフレームワークが紹介されている。このポジティブデビアンスそのひとつ。ポジティブデビアンスは「良い逸脱」という意味。手指衛生を「常に」行うのは難しいとしても、自部署のなかに他とは違ったよい方法で手指衛生を常にしているひとがいるかもしれない。そのひとのやり方をみんなが学習するのがポジティブデビアンスだそう。

似ている方法には「ベストプラクティス」がある。しかし、「ベストプラクティス」とは、よく勘違いされるのだが、「最高の実践」という意味のみでなく、このプラクティスを分析し、管理職(あるいは認定看護師や専門看護師)が自施設にひろめるというスタッフのパフォーマンス向上のための取り組みである。(HBRを見ていると、この「外部から」が「ベストプラクティス」が嫌われる理由らしい。外部からこういうやり方をしろ、と言われると抵抗したくなるのが人間の特性。「あの病院だからできたんでしょ?」「あそこは認定がたくさんいるからね」「あそこは重症度低いから」などなどなどなど。

対して、ポジティブデビアンスはベストプラクティスに似ているようで違う。
ポジティブデビアンスでは、ある問題を解決している部署内のベストプラクティスを見つけます。そして、それをスタッフが発見できるように管理職は支援します。解説策は自部署内にあるため、ベストプラクティスのときに言っていたような理由付けは行いにくくなります。自部署内だと外部から来たものはないので、比較的抵抗にも会いにくくなります。
ポジティブデビアンスを師長や管理職が押し付ければそれはポジティブデビアンスにはなりません。あくまでもスタッフが問題を解決しているひとの行動を見つけてゆくプロセスが大切です。あまり飲み込めていないかと思うので、この辺で。。


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