夜間鎮静を深めることに効果があるか? Part 2

Part 1では、鎮静深度を深めるということが、生理的な睡眠を促進していることになるか、という観点から論文の紹介をしました。
今回は、Part 2ということで、せん妄やSBTの成功率あたりの観点から、2012年、Critical Care Medicine誌から出た研究を紹介します。

140人の12時間を超えて人工呼吸を受けた患者を対象にし、研究参加から4日間、「夜の平均鎮静薬投与量マイナス昼の平均鎮静薬投与量」−つまり、夜間に鎮静薬を増量するとプラスに傾く−と様々なアウトカムの関連を見ています。

以下結果です。

*どのくらいの患者で夜間鎮静薬を増量していたかというと、3日目の時点で、ベンゾジアゼピンを投与されている患者の33%、プロポフォールを投与されている患者の59%。

*昼間のプロポフォール投与量とせん妄発生は統計学的に有意な関連はないものの、投与量が多いほどせん妄のリスクが高まる方向にある。
*昼間のベンゾジアゼピン投与量とせん妄発生には有意な関連がある。

*夜間のベンソジアゼピン増加と次の日のせん妄発生には有意な関連あり。
*夜間のプロポフォールと増加と次の日のせん妄発生には有意な関連はない。

夜間のベンゾジアゼピン増加は翌日のSBT失敗率上昇と関連している。
夜間のプロポフォールと増加は翌日のSBT失敗率上昇と統計学的に有意な関連はみられない。

他にもいろいろ結果はあるんですが、お腹いっぱいになるので、とりあえずここまで。

鎮静薬はやはり鎮静薬。リズムをつけたからといってせん妄を予防するわけではない(ベンゾジアゼピンでは逆にリスクを増加させるし、プロポフォールでもせん妄を予防する方向に働くわけではなく、有意な差はないものの、せん妄発生を促進する方向に働くようにみえる)。

SBTに関しては、鎮静が「残る」ことが関連しているようですね。
興味深い結果です。ではどうしたら?という答えはここではでません。

少なくとも鎮静を夜間増加させて眠っているように「見えれば」、昼夜のリズムがとれて、せん妄も少なくなるんじゃない?
という意見は妥当ではない。ということですかね。


Seymour, C. W., Pandharipande, P. P., Koestner, T., Hudson, L. D., Thompson, J. L., Shintani, A. K., et al. (2012). Diurnal sedative changes during intensive care. Critical care medicine, 40(10), 2788–2796. 

このブログの人気の投稿

カフ圧計がないのですが・・・・

CAM-ICUとICDSCどちらが良い?

急性心筋梗塞、PCI後は心筋酵素のピークアウトまでケアは控えるべき?