鎮静がせん妄評価に与える影響

鎮静がせん妄の大きな原因だと言われています。
実際に評価してみると、鎮静薬の投与により反応性が低下し、せん妄評価で陽性となることがよくあります。これは鎮静薬によるものであり、なにも「せん妄」じゃないんじゃないか?と思われるかもしれません。

教科書的には、鎮静薬によるものでも、せん妄はせん妄になります。なので、せん妄の発生率が報告されている場合、ほとんどは、鎮静薬によるせん妄 (Sedatives Induced Delirium)、敗血症によるせん妄 (Sepsis Induced Delirium)などが入り交じった値なのです。

この辺を実際に検討したグループがあります。


Haenggi, M., Blum, S., Brechbuehl, R., Brunello, A., Jakob, S. M., & Takala, J. (2013). Effect of sedation level on the prevalence of delirium when assessed with CAM-ICU and ICDSC. Intensive Care Medicine, 39(12), 2171–2179. 



この研究では鎮静中断中の患者に対し、CAM-ICUとICDSCを評価しました。評価時のRASSが-2〜-3であった場合と-1以上の場合で分け、せん妄の発生率を出しました。
結果は、CAM-ICUの結果で言うと、
すべての患者における陽性率は53%でしたが、RASS -2〜-3の患者を省くと陽性率は31%まで低下しました。これはまあ、予想通りの結果だと思います。

ここで面白いのは、RASS -2〜-3で陽性率が高くなるのであれば、せん妄の評価をするときには同時に鎮静深度を記録すべきではないかということ、過去の公開されているせん妄発生率には鎮静深度に関して詳しく述べられていないものが多く、対象とした患者層の鎮静深度によってせん妄発生率が変化するのではないか(鎮静深度を考慮して発生率を眺める必要がある)ということ。

著者らは、鎮静薬により意識レベルが低下し、反応が低下している患者はせん妄なのか?という疑問をそれとなく提示しています。

それらの患者は、「鎮静が残っている」のか、「せん妄」なのか?
頭がこんがらかってきます。

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